「総合文化」としてのアウトドアを楽しもう


先週末、大町に行ったときに「田淵行男記念館」に途中で立ち寄りました。
同氏についてはネットでさまざまな情報がみつかりますので、ここでは詳細を省きます。

写真のテントは、同氏が山行で愛用したオーダーメイドのもの。当時はテントといえば3人用以上のものがほとんどで、単独行を好んだ氏としては重量がかさんで非効率なため、文京区湯島に現在もあるテントやザックなどの名店「片桐」に設計図をもちこんで作ってもらったといいます。現在ではこうしたロープロファイル指向のテントやシェルターは割合に見かけますが、当時はきわめて珍しかったらしく、幕営していると、とおりがかった登山者たちがしきりに中をのぞき込んで行ったという話です。

私がこのテントを見て感動したのは「ないものは設計して作る」というきわめてシンプルだけれど、いまの時代に欠けている考え方。
身の回りの多くのものがハイテク化したり高品質になっているために、野外で行動の要になるものを実際に創りだすのは勇気が要るかもしれません。しかし、既製品にちょっと手を加えたりするだけでうんと使いやすくなるモノはかなりあるはずです。でも、そんな些細なことにマジメに取り組んで、自分なりに工夫を試みているひとは意外に少ないのではないでしょうか。

アウトドアでの活動は衣・食・住の3大要素はいうまでもなく、地理、気象、民俗、芸術、数学、生理学、生態学、時勢や経済、哲学や信仰など、およそ世の中にあるすべてのものが総合的に関与していて、一生をかけて楽しむことができる総合文化だと思います。

私たちもまた、そうした総合文化としてのアウトドアの楽しみを少しずつでもご提案できるよう、「ないものを創りだす」心構えで励みます。