フシギな人物・南方熊楠。

今日、5/18のグーグルロゴは、南方熊楠(みなかたくまぐす)生誕145年を記念するもの。

熊野から帰ってきて、近いうちに南方熊楠について記したいと思っていたので、今朝PCを立ち上げて「あ、この日に生まれたんだ!」とちょっとうれしくなりました。

南方熊楠といえば、 以前から「天才」であり「奇行のひと」という印象を強く持っています。
その人物像に触れたくて、中沢新一氏の南方熊楠評伝「森のバロック」を発刊早々に購入したものの、ぜんぜん読み進められずに挫折していました。

その挫折感から救ってくれたのが、水木しげる氏の漫画「猫楠(ねこぐす) 南方熊楠の生涯」です。
あたかも陽光に照り輝く木の葉を描くようにその生涯の光と影がちりばめられ、一気読みで大要をつかむことができました。
水木しげる氏独特の濃密な描き込みがあるページでは、森や自然の精が印刷に籠められているような気さえします。 
しかし、あなどれないのは、一気読みしたからといってきちんと内容が理解できたとはいえないことです。
くりかえし、絵と吹き出しをつぶさに見ていくと、この漫画を描くだけでも相当な資料や調査が必要だったのではなかろうか、と想像できます。資料や調査が多い分だけダイジェストされているところも多いので、流れのままに読み進むとうっかりはしょってしまいそうです。
また、どこまでが真実でどこから架空の話なのかはわかりません。

ただ、きわめて人間らしく、それゆえに敵も味方も多かったということを理解するにはじゅうぶんです。
そして、順風満帆の人生であるようでいながら、長男の病気や相続のことなど心労も多かったようです。

「猫楠」中に登場する猫の独白として「熊あんは自分ほど不幸な者はないと思っていたフシがあるが(後略)…」とありますが、 もしそうだったのならば考えさせられます。

いずれにせよ、南紀の自然が豊かに残っていて、世界遺産となった熊野古道が残っていることにも南方熊楠氏がおおきく貢献しているのはまぎれもない事実です。
そして、自然保護のために体制に真っ向から抵抗した姿にも、いまなお学ぶべきことは多いのです。

山へと繰り出すときにザックへ入れておけば、道中の車内の暇つぶしにも、緑陰での読書にも、または降りこめられた山小屋でも、気軽に読めるのに感得するところがある「おとなの漫画」です。

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